神奈川新聞さん取材(農業ドローン)及び、泉橋酒造と神奈川県立産業技術総合研究所(KISTEC)との共同研究について。
2021/02/01 神奈川新聞さんで、弊社のドローンを使った精密農業の実証実験について取材頂きました。(感謝)
泉橋酒造では、神奈川県立産業技術総合研究所(KISTEC)様等と連携し、いままでの以下のような共同研究を行っています。
平成28~平成30年
≪テーマ≫ 清酒製造における生酛系及び速醸系清酒の香味成分の違いの分析と清酒品評会出品酒への応用
≪内 容≫現在弊社では一般的な醸造方法(速醸系)はもとより、製品の4割は伝統的で難しい生酛(きもと)系の酒造りを行っている。しかし、酒造業界ではこの伝統的な生酛造りはまだほとんど研究されておらず、新しい分野である。そこで、この両醸造方法による日本酒の香味成分などの細かい分析・比較し、現在の醸造方法への応用・改良を行い、今後の新商品開発や各種品評会での入賞を目標とし、事業の拡大の一助とする。
≪結果として≫ 速醸酛と生酛の発酵メカニズムの違い、出来上がる香味の差などが明確になり、清酒の鑑評会や海外のコンテストなどへもその知見が生かされて、各種受賞につながっている。
令和元年~令和2年(継続中)
≪テーマ≫精密農業用ドローンシステム
≪内 容≫ マルチスペクトルカメラ(※1)を搭載したドローンにより、酒造米の生育状況等に関するデータを収集し、そのデータと酒造米の成分との相関関係を分析する「精密農業用ドローンシステム」の開発を目指す。これにより、酒造米から製造する日本酒の香味等の品質向上を図る 。
※1マルチスペクトルカメラ:複数の波長により、植物の生育状況や活性度(※2)を求めることができるカメラ
※2活性度:光合成に必要な光の吸収度
また、この共同研究の様子はYouTubeでも紹介されています。
令和2年度~日本酒の非破壊・迅速簡便分析を可能にする
≪テーマ≫「酒類用ラマン分析技術」について
≪内 容≫ KISTECバイオ技術グループ廣川さま、環境安全グループ加藤さまなどと、株式会社分光科学研究所様との共同開発により、お酒の成分を簡便かつ短時間に分析する装置、技術を開発いたしました。
記者発表資料は以下の通りでした。
https://www.kistec.jp/wp/wp-content/uploads/201130_press-release.pdf
日本酒の非破壊・迅速簡便分析を可能にする
「酒類用ラマン分析技術」について
日本酒の醸造は、米・米麹・酵母・仕込み水などからなる液状の「もろみ」で行っていますが、科学的データに基づいた日本酒の品質向上をはかるため、醸造の現場で「もろみ」の主要成分を非破壊・迅速簡便に「その場計測」できる装置が望まれています。分析対象成分として特に重要なのは、発酵の元となる糖類と、生成物であるアルコールの含有量です。以上の技術ニーズを受けて、今年度より、神奈川県立産業技術総合研究所(KISTEC)、株式会社分光科学研究所(SSL、川崎市麻生区、濱口宏夫代表取締役)、および泉橋酒造株式会社(海老名市、橋場友一代表取締役)は、糖類とアルコールを主なターゲットにした「酒類用ラマン分析技術」の検討を始めました。
当該技術は、SSLが独自開発した分子定量ソフトウェアHAMAND(注1)と、ラマン分光分析を重要な技術シーズとするものです。平成29年度より令和元年度までKISTEC・SSL・他2機関は「ラマン分光を用いた食品中の機能性成分の迅速定量装置の開発」を実施しました(注2)。これに引き続き、令和2年度からはKISTECによる技術支援の元、SSLで「多機能スマートラマン分析計の開発と商品化」を実施中です(注3)。一方、KISTEC・泉橋酒造株式会社・他1機関は、「精密農業用ドローンシステム」を用いて酒造米生育状況を上空から分光マッピング計測し、収穫米のアミノ酸などの成分分析結果と組み合わせることにより、酒造米の品質向上を試みています(注4)。
これらの事業を踏まえ、今回、KISTEC・SSL・泉橋酒造株式会社の3者で、「酒類用ラマン分析技術」の技術的検討を開始した次第です。この「酒類用ラマン分析技術」は、多機能スマートラマン分析計の応用として、ラマン分光計測でスペクトルデータを取得し、分子定量ソフトウェアHAMANDで高度なスペクトル解析を行うことを特徴とする技術です。この技術を用いて製作した分析装置のハードウェア・ソフトウェアにより、日本酒のアルコール度を、従来の(アルコール化学センサを用いた気化法による)破壊分析装置と比べて相関係数0.996で測定できることを確認しました。糖類を含めた同時多成分分析についても、その性能評価を進めています。
本技術の完成により、「もろみ」の主成分を同時に「その場分析」することが可能となり、科学的データに基づいた日本酒の品質向上が達成できると期待されます。
(注1)HAMAND:仮想添加多変量微分スペクトル解析(Hypothetical Addition Multivariate Analysis with Numerical Differentiation、日本、米国、欧州特許取得済)、独自のアルゴリズムを用いて、目的とする標的分子種の含有量を完全自動的に定量することが可能なスペクトル解析法。
(注2)KISTECが公募した産学公連携事業化促進研究に採択され、実施済みです。
(注3)KISTECが公募した製品化・事業化支援事業に採択され、現在実施中です。
(注4)神奈川県の「さがみロボット産業特区」重点プロジェクトに採択され、現在実施中です。
問合せ先
地方独立行政法人神奈川県立産業技術総合研究所(KISTEC)