種もみの温湯消毒
5/2、5/9、5/16と農家が山田錦などの酒米の種もみを持ち寄り、蔵の和釜(冬場お米を蒸すために使う)を利用して、種もみの温湯消毒(おんとうしょうどく)を行いました。
通常の稲作(慣行栽培と呼びます)では、種まき前の消毒の際には、ばか苗病、いもち病、ごま葉枯病、もみ枯細菌病、苗立枯細菌病など予防に「テクリード○○○」とか、イネシンガレセンチュウの予防に「スミチオ○○○」などといった化学農薬を使うことが一般的です。
言うなれば、子供の時にするワクチンのようなもの?で、その後の病気の予防を種の時にしておくのです。
そして、この化学農薬を使用するにも上限が決められています。
これは、種まき前から、苗作り、田植え、成長期と各段階でどのくらいの農薬を使用してもよいかを地域の実情に合わせて設定されているもので(慣行栽培基準)、都道府県ごとに化学農薬の使用成分回数に上限が設定されています。
これは、お米だけではなくすべての農産物に決められています。
よく「特別栽培○○」というレッテルの貼られた農産物を目にすることがあると思います。農家サイドで特別栽培うんぬんのレッテルををするには、その作物を栽培するときに都道府県毎の化学農薬の使用成分回数と化学肥料の使用量をそれぞれ5割以下にすればよいようです。
我が神奈川県は、全国でももっとも使用基準が厳しい県のひとつでもあるそうです。
これは、稲作で全国的に発生し農家を困らせている「イモチ病」や「カメムシ」の害が少ないので結果的に農薬の使用量を少なくしても問題がないからなんだそうです。
因みに神奈川県の農薬有効成分回数はのべ「14」です。
神奈川県の基準内で、農薬で種の消毒を行うと、農薬の成分回数は「3」で、その後、育苗中に苗立枯病などが発生しなければ、更に「3」回分農薬を減らせます。つまり、きちっと温湯消毒を行えれば6÷14=42.8%で約4割もの農薬を減らせることになります。
以上の理由で種の温湯消毒を蔵の釜を使って行っているのです。
それ以降の農薬の使用を減らすには、除草剤や殺虫剤などを減らす必要があります。このあたりの工夫は、まだ別の機会に書きますが、うちの酒米研究会は農薬を多く使っている田んぼでも基準の半分以下、つまり「7」以下です。
泉橋酒造の田んぼは、栽培中の全期間を通じて、雄町は「0」「亀の尾」は「0~3」といったところです。
温湯消毒の手順は、とにかく清潔にした中で「種もみ」を60度のお湯の中で10分間の低温殺菌にし、一度冷却水につけたあと、再度種もみを水の中で浸漬して催芽(さいが)へと移ります。
この催芽期間は、約100度の積算温度が必要で、水温20度の水に浸漬した場合は5日間で種もみは発芽する準備を整えてきます。そうしたら次の播種(はしゅ)、つまり、種まきになります。
泉橋酒造では、酒造りは米作りからの信念のもと、最終的には人様の口に入るものですから、こういった農薬の使用も可能な限り減らすように農家さん達と研究を続けています。
それに、私もたくさん飲みますし・・・・。