蔵元日記

蔵元日記

2013/04/27

蔵の田んぼは肥料を使わないのに何で毎年ちゃんとお米が収穫できるの?

2013/04/27 毎朝の日課、落ち葉の掃き掃除の最中に、パートさんから質問を受けました。


「蔵の田んぼは肥料を使わないのに何で毎年ちゃんとお米が収穫できるの? 
畑で野菜を作るには絶対に肥料がないと出来ないのに、どうして?」と。

 蔵で耕す田んぼは、肥料を使っていません。収穫量を最大にして沢山儲けよう!みたいなことを考えなければ平気なのです。

なぜなら、、、

 田んぼは、大昔から先人たちがずっと土づくり、つまり、石を拾い、堆肥を入れ、耕し続けてこられた賜物ですので、よい土が出来上がっています。田の土と畑の土は全然違います。

 次に、田んぼに入れる用水は、山に降った雨や雪が、山の落ち葉や動植物などの有機物(つまり栄養分)をもって流れてくるもの。この山の恵みの水を田んぼに入れることで田には栄養分が補給されます。また、塩害も防いでくれています。(昔、ナイル川の洪水がエジプトの畑の塩害を防いでいたと歴史でやりましたよね)

 更に、一粒の種もみは、約1600粒程度の酒米になるのですが、今の私たちはその米粒のみを頂いています。
昔は、ワラも重要な資材で、縄、わらじ、むしろ等いろいろと必需品として使っていました。
しかし、今は特別な場合を除き、残る大量のワラや切り株は刻んでそのまま田に残し、翌年の肥料になります。

そこで忘れてはならないことは、光合成。

この大量の栄養豊富なワラは、たった一粒の種もみが水と栄養とそして、「二酸化炭素」、そして、「太陽の光」を吸収して立派に成長し、出来上がったもの。つまり、光合成により外部のたくさんの恵みが詰まったものです。
(昔、小学校の理科で勉強しました)

 昔から、お米を育てているのは、人ではなく実は、自然環境なんですね。そして、だからあえて肥料を入れなくても平気なんです。

そこで、泉橋酒造の田んぼでは、どの田んぼにも育てる品種との関係で、無肥料でも必ず毎年これだけの収穫量はある、という均衡点、つまり、肥料や農薬を多用して栽培しなくても平気な恵みの量(分け前)があると考えています

これは、肥料や農薬をそれなりに使った田んぼの収穫量と比べると少なくなります。でも、収量が少なくてもその分多くの田を耕せばよいのです。私どもの地域にも休んでいるもったいない田が多いですし、活用しない手はありません。

酒米の米粒は、分け前です。なぜなら、田んぼは人間が作った構造物ですが、そこを住処や繁殖場所、餌場をするさまざまな動植物の集まる場所にもなっています。そして、たくさんの自然の恵みによって出来上がる田んぼは、結果として、人間だけが独占してはならないものだとも思っています。だから、農薬も使わないか、もしくは、必要最低限にしないとエチケットに反しますよね。

そんな農業だから、肥料いらないのです。

とパートさんに答えました。昔から先人たちが苦労して作り上げてきた田んぼ。自然の恵みを米という価値あるものに変えてくれるこの立派な装置。

これからも大切にしていかなければなりませんね。

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