酒造りストーリー

風土も酒も人がつくるもの

海老名耕地の恵み

神奈川県海老名市といえば、全国的には東名高速道路の海老名サービスエリアの名前が知られているようです。しかし、歴史に目を向けると、泉橋酒造がある海老名市の田んぼは古くから「海老名耕地(えびなごうち)」と呼ばれています。この海老名耕地は、大山をはじめとする丹沢の山々に守られ、豊かな相模川の流れが創りだした沖積平野に広がっています。海老名は、古代から県内随一の穀倉地帯であり、平安時代には相模国の国分寺が建立されて場所でもありました。泉橋酒造は、これからも海老名耕地の恵みを美味しいお酒で表現していきたいと考えております。

酒米研究会の神森さん

海老名耕地という名の純米酒から

良い酒にするための栽培技術、自然環境を保全できる農業

さがみ酒米研究会の生産者は、(平成28年現在)7名です。この酒米研究会の栽培品種は、栽培面積の多い順番に「山田錦」「楽風舞」「亀の尾」「雄町」「神力」で、飯米用に「コシヒカリ」とも栽培しています。その栽培面積は、地元海老名市の稲作面積の約15%を占めるまでになっております。

「どうして、泉橋酒造は他所からお米を買わずに、地元での栽培にこだわるの?」という質問をよく頂きます。

酒造りを大きくわけると「1農業」「2精米」「3醸造」という3つのステージがあります。当たり前ですが、よいお酒を醸そうと思ったら、よいお米がなければなりません。では、よいお米とはどんなものなのか、そこに泉橋酒造の考える米作り哲学があります。 ひとつは、よい美味しいお酒作りのための「土づくり」。二つ目は、安全かつ環境保全ができる「減農薬栽培」、3つ目は良い精米工程のための「整粒歩合の向上」。この3つの要素はとても大切です。しかしながら、実は農家さんの持つ技術しだいでこの3要素の結果が決まってしまうのです。

例えば、土づくりで云えば毎年の冬場に行う田んぼ土壌の分析と肥料の検討会、減農薬栽培においては種もみの温湯消毒や田んぼの生き物調査、無農薬栽培など、整粒歩合の向上では、収穫適期の見極め作業や収穫後の乾燥機の選択など・・・・。

この3つの要素が酒作りには欠かせない条件だと泉橋酒造は考えております。だからこそ、地元で顔のみえる環境の下で、農家さんと会話しながら進める酒造りこそが、泉橋酒造の酒造りの大切な要素になっています。

そして、田んぼを守っていくこと。田んぼは私たちの子孫からの預かり物です。そんなことを考えながら酒造りに邁進しております。

是非、泉橋酒造の農業を見に来てください。一緒に語らいましょう。

指導中の故・永谷正治先生と一緒に

月に1度の田んぼでの生育状況の調査

酒米研究会の池上さん、田植え中です。

仕込み蔵の和釜を使って、種もみの温湯消毒の様子。種もみの消毒に農薬を使わずに済む。

天候にあわせて栽培方針も変えていきます

除草機での除草作業。農薬を使用しないで栽培する酒米の圃場にて

精米は酒造りの魂、扁平精米による酒造り

精米方法には、通常の精米方法と扁平精米(へんぺいせいまい)法による精米方法の2通りがあります。泉橋酒造は、目標とする酒質に合わせてこの2つの方法を使い分けています。  一般的に通常の精米方法(図1)は、玄米の細長い形状に対して高精米になるほど、白米は球状に近くなり、厚みがうまく磨けていないことが指摘されています(※1)。それに対して、扁平精米という方法は、精米機のプログラムを変更して、(図2)のように玄米の形状に近い形で磨いていく方法をとります。これにより、球状に磨くよりも、厚みに属する部分はよく磨け、逆に長い部分は残るために、原料をより削り過ぎることなく大事に使えるやり方です。試験の結果、同じ精米歩合である場合扁平精米は、通常の方法に比べて約10%程の精米効率と酒質の向上が図れます。 但し、扁平精米は、玄米の整粒歩合が良くないとよい精米結果は得られませんし、通常の精米方法より精米時間が約1.5倍ほどかかります。 ※1:1998年に斉藤富男先生(元・東京国税局鑑定官室長)は研究・発表された技術です。

通常の精米方法のイメージ図

扁平精米方法のイメージ図

白米の厚みを図るマイクロメーターと拡大図

玄米と白米のサンプル調査中

精米の終わった白米、この後「枯らし」をします

水、丹沢山系の伏流水、辛口

泉橋酒造は、仕込みに使う水は、蔵の敷地内で地下100メートルからくみ上げた「丹沢山系の伏流水」を使用しております。神奈川県の平均的な水道水は硬度60 ml /ℓ程度ですが、この仕込み水の特徴は、硬度が130~140ml /ℓと高くなっています。この高硬度の水は日本の水としては珍しいようで、弊社の目指す辛口の酒質に一役買っています。

水源地帯の大山と丹沢の山々を望む

いづみ橋の仕込み水について(データは神奈川県の水道局から引用)

基本に忠実に、正当な手造りの酒蔵

泉橋酒造は、伝統的な手造りのよる純米酒の醸造を行っています。杜氏歴30年の小原彦人杜氏(南部杜氏)を筆頭に地元社員らによる秋口から春先までの半年間休みなく純米酒の仕込みが続きます。  泉橋酒造の醸造上の特徴は、料理の旨さを引き立てる爽やかで旨い辛口の酒質を目指しています。 「麹作り」においては、最上級の技とされる「麹ふた」を使用した方法ですべてのお酒を仕込んでいます。「麹ふた」を使用した方法は、夜中もその作業が続くなど労働集約的な方法とされ、最近では採用しない酒蔵が多いようです。  「酒母作り」においては、全体の半分を生もと系の酒母作りを行い、より自然な味わいを大切にしています。  「もろみ(発酵)」においては、総米600kg仕込みから1500kgまでとし、出来上がったお酒に必要以上の糖分を残さない辛口の酒質に仕上げることを旨としています。  「上槽(しぼり)」においては、伝統的な「酒槽(フネ)」を使用した袋しぼりを行っています。  なお、年間で約950石(1石は180リットル)ほどの純米酒を製造・販売しております。

麹米の手洗い、蒸し米の限定吸水には欠かせない基本の作業

麹室での作業、手間暇を掛ける、つまり、手と時間を使うということです

蒸し上った米をすばやく運ぶ寺田副杜氏

蒸し上ったお米の荒熱を取り、麹室へ引き込みます

生もと造りの山おろしの様子

もろみ造りの第一ステージ「初添え」、蒸し米の投入シーン

もろみの面を見ながら、櫂入れ中

最もワクワクする酒袋での上槽作業。手が冷たい。

酒造の神に見守られ

蔵の裏手の田んぼから大山(おおやま)や丹沢の山々が見渡せます。

阿夫利神社の御祭神の大山祇大神は別名を酒解(さけどけ)神といわれており、酒造の神として、 その御神徳が広く知られています。

その昔、今のように用水路などがしっかりと整備されていないころは、田や畑にとって恵みの雨を降らす雲の存在は、今の何倍も重要だったことと思われます。西の空にそびえたつ大山は古くから神奈川に暮らす人々の信仰を集めていますが、今でも、大山に雲が懸かると雨が降りますので、よく大山を天気予報代わりに見ています。しかし、その昔は恵みの雨が降る兆し、ということで重要なことだったと想像されます。大山にある神社はその名のとおり「雨降り神社」が転じて「阿夫利神社」と呼ばれるようになったそうです。

台風が相模湾方面から上陸する場合などは、この大山や丹沢の山々に台風がぶつかり、県央地区は大抵ひどい被害が起きることはあまりなく、山田錦などの稲も助かっていると思われます。

関八州のヘソと云われる大山を望む、大山の素晴らしい眺望

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